
Fender騒動の最中にPRSが「Defender」! ストラト形状の法的紛争と、思わぬコラボの話
こんにちは、チバカン楽器です。
最近、Fenderのストラトキャスターのボディデザインをめぐる法的紛争が、楽器業界で話題になっています。
そんな中、PRSとジョン・メイヤーから登場したのが、車のDefenderとコラボした「Silver Sky Defender」。
Fenderと争っている最中に、Defender。
名前を見て「これはあおっているのでは?」と感じた方もいるかもしれません。実際、海外でもそんな受け止め方が話題になりました。
ただ、面白い話ほど、事実と推測を分けたいところです。今回はこのコラボの話も交えながら、2026年10月9日時点で確認できるFenderの法的紛争を整理してみます。
発端は、ドイツでの著作権に関する判決
今回の起点は、2025年12月22日にドイツのデュッセルドルフ地方裁判所が出した判決です。
Fenderは、中国企業Yiwu PhilharmonicがAliExpressを通じてドイツ向けに販売していたギターについて、ストラトキャスターのボディデザインの著作権を侵害していると主張しました。
裁判所は、そのデザインを「応用美術の著作物」と認め、被告による対象ギターのドイツ国内での流通を禁じました。Fenderが判決を公表したのは2026年3月です。
ただし、これは被告が期限内に防御を提出しなかったことによる欠席判決です。法的な理由は判決文に書かれていますが、双方が十分に反論を交わした案件とは区別して見る必要があります。
Fenderは、この判決を根拠にEU域内で広く権利行使できるとの立場です。ただし、その解釈がどこまで認められるかは、今後の争訟で検証される段階にあります。ストラトタイプ全般が一律に違法になったわけではありません。
「昔、Fenderは負けたはず」も間違いではない
2009年、米国の商標審判では、ストラトキャスター、テレキャスター、プレシジョンベースのボディ輪郭の商標登録が認められませんでした。
多数のメーカーが長年使ってきた一般的な形状となり、輪郭だけではFender製品だと識別できないという判断でした。
今回は、国も権利も異なります。
形状がメーカーを識別する「商標」になるかと、創作的なデザインとして「著作権」で保護されるかは、別の問いです。以前の判断だけで、今回の結論が決まるわけではありません。
YAMAHAやPRSへの警告と、Thomannとの訴訟
この判決の公表後、Fenderは他社にも警告状を送りました。PRSとYAMAHAは、通知を受け取ったことが確認されています。
YAMAHAは2026年5月に警告状を受領しましたが、対象モデルは公表されていません。Pacificaではないかという報道は、推測として扱う必要があります。また、確認した公開資料では、FenderがYAMAHAを実際に提訴したことは確認できません。
一方、Harley Bentonを展開するドイツの大手楽器販売店Thomannとの争いは、訴訟へ発展しています。
Thomannが先に、自社製品がFenderの権利を侵害していないことの確認を求める手続きを開始し、その後Fenderも著作権侵害訴訟を提起しました。
警告状を受け取った会社と、実際に裁判で争っている会社は、分けて理解したいところです。
そこで登場した「Silver Sky Defender」
そんな時期に発表されたのが、PRS、ジョン・メイヤー、Land RoverのDefenderによるコラボレーションです。
Defenderの車体カラーをSilver Skyに取り入れた限定モデルで、米国製は伝統的な4色を採用。各色500本、世界合計2,000本限定となっています。
SE版にも4色が用意され、こちらはブラック・ピックガードを採用。2027年6月30日までの期間限定受注です。
車の色をギターに落とし込む企画として魅力的ですが、騒動の最中だったため、注目が集まったのは名前でした。
Defenderの中に、Fenderが入っている。
しかも、PRS自身がFenderから通知を受けている状況です。「De-Fenderという名前で対抗したのでは?」という読み方が広がるのも、無理はない気がします。
Guitar Worldも、2026年9月30日付の記事で「PRSはDefenderコラボでFenderをからかっているのか?」という疑問を取り上げています。
でも、挑発のために作ったとは確認されていない
ここには、少し落ち着いて見たい事情があります。
同記事によると、ジョン・メイヤーはコラボの初期の話し合いが2026年1~2月に始まっていたと説明しています。また、以前からDefenderを所有・収集しており、自分が好きな車とギターを結び付ける企画だったと語っています。
PRS公式でも、Defenderへの愛着から生まれたコラボレーションとして紹介されています。
つまり、確認できるのは「Fenderへの皮肉と受け取られて話題になった」ということです。「PRSがFenderをあおる目的で企画した」と断定する根拠はありません。
それでも、このタイミングでこの名前が登場したのは、ギター好きとしては思わず反応してしまう出来事です。企画側の意図とは別に、ニュースの文脈が商品にもう一つの物語を加えたように感じます。
ブティック系への対応は、大手中心の方針へ
当初は、LsLのような小規模メーカーにも警告状が送られ、業界やプレイヤーの間で広範な反発が起きました。
その後、2026年9月に報じられたインタビューで、FenderのCEOであるBud Coleは、法的手続きが先行してしまったことを認め、大手メーカーを中心に対応する方針を示しています。
ただし、すでに送られた警告や締結済みの合意が、すべて撤回されたという確認はありません。「今後の方針」と「既存案件の解決」は、分けて見る必要があります。
Reverbのオーナーとの関係も気になる
Fenderの過半数株式を保有するServcoは、Creator Partnersと共同でReverbを取得しています。買収は2025年6月2日に完了しました。
メーカーのオーナーが楽器売買プラットフォームにも出資する構図は、販売店として注目する点です。
ただし、この資本関係だけでServcoが訴訟を指示したとは言えません。確認した判決文の原告はFenderであり、Servcoの具体的な指示を示す公開資料は確認できていません。Reverbも買収時には、独立運営を継続すると説明しています。
中古楽器店として考えること
販売店の商品説明に関係する、別の動きもあります。
Guitar Worldの2026年7月13日付報道によると、豪州の中古店Cool Old Guitarsは、「Fernandes Stratocaster」などの商品表記を含む販売ページの表示について、Fenderから商標に関する警告を受けたと公表しました。
これはボディ形状の著作権とは別の案件であり、裁判で侵害が確定したという話でもありません。
チバカン楽器としても、メーカー名や正式型番を正確に記載し、形状の説明とブランドの商品名を区別することを大切にしたいと考えています。
Fenderが生み出したデザインを守ることと、他社が工夫を重ねて新しい楽器を生み出すこと。その境界が、今回の争いで問われています。
一方で、Silver Sky Defenderの話は、同じギターでも色や名前、背景の物語によって印象が変わることを感じさせてくれます。法的な争いを追うだけでなく、こうした楽器そのものの面白さにも目を向けていたいですね。
なお、2026年10月現在、ストラトタイプのギター全般について違法性が確定したわけではありません。Thomannとの訴訟など、双方が主張を争う案件の結果を、今後も確認していきたいと思います。
著者 マイスター大崎

チバカン楽器 代表
ESPミュージカルアカデミーギタークラフト科リペアコース卒業後 ヤマハミュージックトレーディング内にてMARSHALLの修理会社の門をたたく。
勉強不足を感じ退社後 ROLANDの修理会社にて10年間ほどアンプ、エフェクターの修理業に従事。
退社後 地元の大型複合リサイクルショップ【千葉鑑定団】へ入社。店長を経験後 楽器専門【チバカン楽器】を立ちあげ今に至る。
愛機はFender TelecasterBass1969 、Chaki ウッドベース、
他ジャパンヴィンテージのギターを多数所持。趣味は【H2Y Labolatory】名義でエフェクターの改造や製作をしている。
電線や古いコンデンサー好きで特にオイルコンデンサーの匂いが好き。エロくて変態ということはベーシストの特徴。











