チバカン楽器 マイスター大崎です。
先日、左利き用ギターを右利きにしたストラトを また左に戻してくれとの依頼があり。
お客様の中にはナットというのは専用の溝切られたものが売っていてそのままポンっと交換して終わりだと思っておられる方がいます。
なにせ楽器屋さんにも溝が切ってあるものが売っていますからね。
実際は木を削って造っている楽器は個体差が多く ほとんどの場合 それに合わせて削り出しています。
ナットは基本 牛の骨の粉を焼成した物を使っています。
ご存じの通りプラスチック、TUSK、カーボン、ブラス、などもありますがここの材料で結構鳴りが変わってきます。
ただうちのような中古楽器販売屋さんは基本中古を扱っている為 ピカピカの真っ白のナットへ交換すると違和感があるんで
オイルにつけたものを使っています。俗に言うオイルナットです。
サウンドは芯があるサウンドで倍音は落ち着いた感じになりますがアームがあるギターにはお勧めできます。
あと磨いたあとの透明感のある美味しそうな感じが良いです。
オイルは潤滑の良い物を使っており染み込む感じや揮発しない工業用の油を主としてブレンドしています。
含侵するように真空に近い状態にする容器でストックしています。
まずは元のナットを取り外すのですが接着剤でベタベタなものもあれば
むしろほとんど接着無しでポロッと取れる場合もあります。
基本専用工具で外します。
今回は右利きを左利きに戻すのでこれをはずして
その次は無垢のナットを厚みを削って罫書き高さを出します。
今回は左利きなので逆なのですが基本は一緒です。
色々なやり方はありますがマイスター大崎はほとんど先に高さを成形し
溝をほんの少し削って終わりにするくらいにしています。
削る量は少ない方が誤差も出にくいです。
この丸さには賛否両論あるかと思いますが ここにこだわることでさらに手間暇をかけているギターの証拠となり
ハイエンドなギターほど触った時に抵抗か無い角のないナットの事が多いです。
ここに職人のこだわりが出るのかと思います。
細い弦から1弦用のナット溝切やすりでおおまかに削り 徐々に太いやすりに切り替えていきます。
1弦は1弦用、2弦は1弦と2弦用、3弦は1,2,3弦… 6弦は1~6弦用まで使い徐々に広げていきます。
ナット溝切やすりは色々な癖があるので何とも言えません。
6弦は6弦だけで削るリペアマンも多いかと思いますが徐々に大きくしていった方が誤差が少ないです。
ちなみにナットはある程度ピッタリと大きさを出しているので接着せずに切っています。
オイルナットが染み込み切れていないこともあるのでここで一度オイルに1日
付けます。
https://www.instagram.com/reel/CQ3resxDFDg/?utm_medium=copy_link
オイルにつけると 削って改めて外気に触れた部分にはオイルが染み込み
空気がポコポコとしていることが分かります。
染みてる染みてる。
でナットの下にちょっとアロンをつけて
マイスターの場合サイドのところにもつけて磨き込みます。
これで完成です。
マスキングを貼ると油分がとられるのでそこはオレンジオイルで油分補充し
ねこだまり工房の蜜蝋ワックスで外気を遮断知るのも忘れてはいけません。
ナットの形はリペアマンの腕の見せ所なのでマイスターの場合余分なところは極力落とします。
ストラトのようなアーム付の場合は弦の上までナットは残し丸めます。
弦溝接点が極力少なくなるようにしています。摩擦を減らしなめらかになるようにです。
横から見るとわかり易いかと思います。
滑らかに弧を描きますが前のヘッド側の方がなだらかでその裏も丸いのが分かるかと思います。
なのである程度のギターは高いギターなのか安いギターなのかはナットを見ればわかります。
今度楽器屋へ行った時はナットをじっと眺めてみてください。
そのこだわりが垣間見えます。
![友だち追加](https://scdn.line-apps.com/n/line_add_friends/btn/ja.png)
著者 マイスター大崎
![](https://chibakan-gakki.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/1603465332299.jpg)
チバカン楽器 代表
ESPミュージカルアカデミーギタークラフト科リペアコース卒業後 ヤマハミュージックトレーディング内にてMARSHALLの修理会社の門をたたく。
勉強不足を感じ退社後 ROLANDの修理会社にて10年間ほどアンプ、エフェクターの修理業に従事。
退社後 地元の大型複合リサイクルショップ【千葉鑑定団】へ入社。店長を経験後 楽器専門【チバカン楽器】を立ちあげ今に至る。
愛機はFender TelecasterBass1969 、Chaki ウッドベース、
他ジャパンヴィンテージのギターを多数所持。趣味は【H2Y Labolatory】名義でエフェクターの改造や製作をしている。
電線や古いコンデンサー好きで特にオイルコンデンサーの匂いが好き。エロくて変態ということはベーシストの特徴。