「Fender」というブランドは、ギターやベースを演奏している方であればほぼ全員が知っているであろう大手楽器ブランドです。時代を先駆けてソリッドボディのエレキギターを製造し、半世紀以上経った今も大手として君臨しているFender。しかし、そのブランドの歴史について知っている方は少ないかもしれません。
Fenderのギターをもっと深く理解するために、本記事ではFenderの歴史とギタリストに人気の理由を解説していきたいと思います。
Fenderの歴史
「Fender」は初めからギターを製造していた会社ではありません。ここでは、Fenderの前身だった「フェンダー・ラジオ・サービス」から歴史を解説していきます。
Fenderの創業とレオ・フェンダー
Fenderの創業者である「レオ・フェンダー」は、1938年にカリフォルニアで「フェンダー・ラジオ・サービス」を創業しました。この会社は名前の通り、ギターではなくラジオの受信機や音響機器の修理を行います。レオ・フェンダーがギターと関わるようになったのは、1945年のことでした。
1945年、レオ・フェンダーはドク・カウフマンと共に「K&Fマニュファクチュアリング」を設立、スティールギターとアンプの製造を開始します。事業がこのまま順調にいくと思っていた矢先の1946年、ドク・カウフマンとの共同経営は解消になってしまいます。残ったレオ・フェンダーは1947年に社名を「フェンダー・エレクトリック・インストゥルメント・カンパニー」に改名しました。これが私たちの知っているギターブランドのFenderの始まりです。
Fenderとエレキギター
エレキギターの製造自体は1920年代からすでに始まっていました。しかし、当時のエレキギターはボディ内が空洞なホロウボディが主流です。ソリッドボディのエレキギターも存在はしていましたが、「リッケンバッカー」が作っていたハワイアンギター用や「ポール・ビグスビー」がオーダーメイドで作っていたごく一部に限られます。
そのソリッドボディのエレキギターに着目したレオ・フェンダーは、1948年から試作品の製作に着手し、翌1949年に「エスクワイヤー」として発表しました。このエスクワイヤーが、後の「テレキャスター」の原型になります。エスクワイヤーはさらに改良され、1950年に「ブロードキャスター」が誕生、このブロードキャスターが改名後にテレキャスターと呼ばれるようになります。
Fenderの低迷期
そんなFenderですが、ずっと業績を伸ばして順調に経営をしてきたかと言うと、そうではありません。1965年にはアメリカ最大手の放送局「CBS」に買収され、会社としてのFenderは無くなりました。このタイミングでレオ・フェンダーは経営者から技術顧問へと異動しますが、その数年後には退社してしまいます。レオ・フェンダーが去ったことで技術部のスタッフの育成ができず、品質の低下と楽器業界全体の不況が訪れます。
1985年にはCBSが楽器部門から撤退。「YAMAHA」などに在籍していた「ビル・シュルツ」を最高経営責任者に迎えることで新たなFenderのスタートとなりました。その後、新しい工場の建設や外部から技術指導を招くことで売り上げも持ち直し、現在に至ります。
Fenderギターの躍進
ソリッドボディギターの量産で他社を大きく引き離したFenderは、その後も試行錯誤を繰り返しながら様々なエレキギターを発表しました。その一覧は、以下の通りです。
・1954年 / ストラトキャスター発表
・1956年 / ミュージックマスター発表
・1958年 / ジャズマスター発表
・1962年 / ジャガー発表
・1964年 / ムスタング発表
上記以外にも数々の試作品が発売されましたが、人気の出なかった機種は数年で製造が打ち切りになっています。上記にあげたギターは、今でも数々のアーティストによって演奏されている名機ばかりですね。
半世紀以上もの間、数々の歴史的なギタリストの手で演奏され引き継がれているのには、一体どのような理由があるのでしょうか?
Fenderのギターが人気の理由
Fenderのギターが人気の理由は、以下の3点です。
・同じ機種でも年代によってサウンドが異なる
・数多く出回っているのでメンテナンスしやすい
・音作りの参考がたくさんある
同じ機種でも年代によってサウンドが異なる
Fenderが人気の理由は、同じ機種でも年代によってサウンドが異なる点です。Fenderはソリッドボディのエレキギターの先駆けブランドであったが故に、常に挑戦し、試作を繰り返してきました。同じ機種でも木材や仕様を変え、その時代時代に合ったサウンドを追求してきたのです。
現在販売されているストラトキャスターやテレキャスターの名前に「50’s」や「60’s」などが入っているのは、その時代の音を再現しているためです。同じ機種でも様々なサウンドを選べるのがFenderのギターの特徴です。
数多く出回っているのでメンテナンスしやすい
また、Fenderは歴史があるので、新品中古含めるとかなりの数のギターが市場に出回っています。そのため、初めてギターを購入する方でもネットで弦交換や弦高調整のやり方をすぐに見つけられます。日常のメンテナンスからちょっとした改造まで、多くの情報が手に入るのがFenderの魅力です。
音作りの参考がたくさんある
そして、ギターを始めたばかりの方に一番嬉しいのが、音作りの参考がたくさんあることです。Fenderは、国内外問わず数多くの有名ギタリストに愛用されてきました。それは、CDや動画サイトでその作品の音を手本にすることができるという意味です。
音作りにはエフェクターやアンプとの兼ね合いも大切ですが、肝心のギターが全く違っていてはいくらエフェクターやアンプを真似ても理想の音にはたどり着けないでしょう。
実際に購入する前にテレキャスターの音やストラトキャスターの音のイメージを掴みやすいのも、Fenderのギターのメリットです。
Fenderは歴史と人気のあるギターブランド
今回はFenderの歴史と人気の理由ついて解説しました。憧れのギタリストがFenderを愛用しているなら、同じ機種のギターを購入するのが練習にも身が入るのでおすすめです。
長年の試作を経てもまだFenderのギターは進化の道程にいます。そのFenderの歴史とアナタのギタリストとしての歴史を重ねわせてみてください。
著者 マイスター大崎
チバカン楽器 代表
ESPミュージカルアカデミーギタークラフト科リペアコース卒業後 ヤマハミュージックトレーディング内にてMARSHALLの修理会社の門をたたく。
勉強不足を感じ退社後 ROLANDの修理会社にて10年間ほどアンプ、エフェクターの修理業に従事。
退社後 地元の大型複合リサイクルショップ【千葉鑑定団】へ入社。店長を経験後 楽器専門【チバカン楽器】を立ちあげ今に至る。
愛機はFender TelecasterBass1969 、Chaki ウッドベース、
他ジャパンヴィンテージのギターを多数所持。趣味は【H2Y Labolatory】名義でエフェクターの改造や製作をしている。
電線や古いコンデンサー好きで特にオイルコンデンサーの匂いが好き。エロくて変態ということはベーシストの特徴。